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Rental Orbit Space サービス終了と今後について

昨日報告させていただきました通り、Rental Orbit Space につきましては、ひとまず2024/11/30を持ちましてサービスを終了する運びとなりました。今までありがとうございました。

今まで殆どお話しすることのなかった運営方針と発生していた課題と葛藤、今後についてお話しできればと考えています。

活動開始時期の状況と運営方針

Rental Orbit Space は、2008年12月、当時高校生だった私が趣味と勉強目的で立ち上げたサーバを、自身と同じ学生の勉強場所として、創作活動で生まれた作品の公開場所として、なるべく好条件(機能・容量)で貸し出すというのを目標として始めました。

というのも、当時は企業が提供する無料サービスでサイトを公開しようとすると静的なファイル(HTMLやCSS、画像など)しか設置できなかったり、容量が非常に少なかったりと中々に選択肢が限られ、お金や決済手段の限られる学生がコンテンツを公開したり学習を開始するにはハードルが高かったという背景があります。

当時、企業ではなく個人運営のレンタルサーバーを利用するには、利用者が何の目的で何のコンテンツを公開するのかについて作文を書いて運営者に送り、運営者に厳選されたユーザにのみアカウントを提供するという「審査」と呼ばれる過程を踏むスタイルが殆どでした。また利用目的に「学習目的での利用」はあまり歓迎されず「許可しない」と明記しているケースも珍しくはなかったかと思います。ですが私自身としましては学びや作品の公開を望む人がいれば可能な限り利用してもらいたいと考えており、一貫して「審査」と呼ばれる過程を重視しないスタイルをとっていました(利用目的が「ああああ(以下略)」というような、極端に不真面目な内容については利用を許可しないこともありました)

発生していた課題と葛藤

簡潔に述べますと、想像以上に嵩む費用と不足するマンパワー、進歩し変化していく技術、そして自身と環境の変化になります。

Rental Orbit Space は設置されたサイトの下部に広告を設置することで、運用費(電気代や通信費)を確保するスタイルで運営してきました。当然運営するにあたり突然機材が故障することもあります。しかし、恥ずかしながら収益がそれらを上回ることは殆どなく常に赤字でした。これにつきましては企業であれば大問題ですが、私の目的は趣味と勉強用であっため些末な問題だと言えるでしょう。

一方で運営保守と機能追加に伴うマンパワー不足は明らかに問題があったと言わざるを得ませんでした。誰でも無料で登録できるサービスであるため、悪意のあるユーザが紛れ込むこともあります。中にはCGI Proxy(PHP Proxy)やWebShellなどを始めとする攻撃を目的としたツールを設置を試みるユーザもいました。このようなツールは悪用の仕方によっては警察・裁判沙汰になりかねません。また、未成年の閲覧にふさわしくないコンテンツが掲載されていたり掲示板にスパムボットが群がっている状況では広告代理店より広告の配信が停止されることもあるため独自に対策を行う必要がありました。

ITというのは歳月が経過しますと求められる技術は移り変わり、企業が提供するホスティングサービスも低価格化と多機能化が進みます。その中でもWeb開発の技術とインフラ関係の変化は激動といっても良いでしょう。当初はLAMP(Linux, Apache, MySQL, Perl/PHP)が求められていましたが、VPS(Virtual Private Server)が一般的となりアプリケーションサーバとNginxなどによるリバースプロキシの構成が当たり前になりました。さらに昨今ではKubernetesのようなコンテナ化技術の普及している状況です。しかし共有レンタルサーバーとなると状況は特殊になり、例えばNginxであっても.htaccessの需要を考慮しますとApacheから置き換えるのは難しいものがあります(ApacheとNginxを併用する方法はありますがそれではNginxの速度を活かせません)。アップデートもユーザーが設置した様々なものに影響が出ないよう可能な限り配慮して実施する必要があります。またVPSやコンテナ技術を利用したサービスとしてユーザに提供するとなるとグローバルIPやサーバの台数が今までと比べ物にならないほど必要となり、とても現実的ではありません。このように運営を開始した頃のサービスから中々変化を出せないのは自身も成長していないようで大変なもどかしさがありました。そして、これらの模索は運営保守における時間的・精神的リソースを多大に奪うことに繋がりました。

次に、仮想基盤(ハイパーバイザー)の移行に関する問題があります。現在利用している仮想基盤は無償提供が終了したため、移行を余儀なくされています。この移行ではサービスを稼働させたまま現在のサーバ(実機)を流用することは不可能であり、新たなサーバーの購入が必要であり刷新するとなると数十万円規模の費用と仮想マシンの変換など、多くの作業と時間を伴うことが予想されます。

今後について

今回の Rental Orbit Space としましてのサービス終了は私自身の仕事とプライベートと運営管理のバランスが取れないことが最大の理由であります。終了までのスケジュールはメールにてご案内させていただきました通りですが、私の個人用サーバを管理するのと近いスタイルでの運営であれば負担は少ないかと思います(アップデートなどで互換性などが多少損なわれる可能性があるため、それを考慮し広告などの表示は行わないつもりです)。しかしながら需要が未知数なため、現在の利用者の中でそれでも良いと思われる方や、移行先の選定に困っている方がいらっしゃいましたらメールにて連絡ください。

Rental Orbit Space を運営しました15年という時間は実に私の今日までの人生における半分に迫る時間であり、様々な学びや経験とチャンスをもたらしてもらいました。重ね重ねになりますが、ありがとうございました。